犯人に告ぐ(上・下)

作者:雫井脩介双葉文庫
神奈川県のディスカウントショップの経営者の孫が誘拐され、「ワシ」を名乗る犯人から2000万円の身代金が要求される。
ヤングマン」というあだ名の敏腕警視の巻島が陣頭指揮をとるが、身代金の受け渡しに失敗し、孫は殺害されてしまう。
巻島は釈明のための記者会見で、執拗な質問に対し、記者達に暴言を吐く醜態を晒し、田舎の警察に左遷される。
それから6年が経ち、神奈川県では子供ばかりを狙った連続殺害事件が発生していた。
今度は「バッドマン」と名乗る犯行声明がニュース報道番組に届く。
捜査に行き詰った神奈川県警は、再び巻島を登板させる。
だが、巻島の役割はニュース報道番組に出演し、犯人に呼びかけるというものだった。
この小説は犯人対警察という構図が主題ではなく、警察組織内の主導権の奪い合いと、マスコミのスクープ合戦だ。
伏せていた情報が他局に流れ、スクープとなり、巻島は内部の敵とも立ち向かうことになる。
読む前に持っていた印象とかなり異なる小説で、これはこれで面白い。
特に序盤の巻島の暴言を吐くまでの描写は、追い詰められる感じが非常に伝わってくる。
だから、犯人の割り出しより、内部の敵を燻りだす部分が強調されたのは少し残念。
「虚貌」のスリルと「火の粉」の巧みなストーリー展開に比べると、少し落ちると思う。
それでも面白い小説だと思う。豊川悦司が主演で映画にもなるようだし。

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)