焔−The Flame

作者:堂場瞬一|中公文庫
FA移籍を悩む無冠の強打者と彼の代理人の、シーズン終了直前の行動を描いたサスペンス野球小説。
スターズの3番打者の沢崎はFAの資格を取得し、メジャーリーグへの移籍を画策していた。
そんな彼の前に現れたのは、かつての高校野球のチームメイトで、現在はアメリカでエージェントを営む藍川だった。
藍川は沢崎のイメージアップのため、様々な人脈を駆使し、沢崎を内面から変えていく。
さらに契約金を吊り上げるために、沢崎に打撃のタイトルを一つでも獲得するよう、ハッパをかける。
沢崎の打撃成績は申し分なかったが、タイトルは新人王以外獲ったことはなかった。
それは、チームメイトである天才肌のスラッガー神宮寺の存在で、惜しいところでタイトルを攫われてきた。
沢崎は神宮寺を「コイツさえいなければ」と憎んでいた。チームは優勝争いをし、沢崎と神宮寺はタイトルを競っていた。
そんな中、神宮寺が不倫の現場を写真週刊誌に撮られてしまう。また神宮寺への相手投手の不可解な四球が続く。
エージェントの藍川が暗躍していることを知らない沢崎は、ライバルの脱落を喜ぶが、自身の打撃成績も急降下する。
さらに神宮寺は暴漢に襲われる事件が発生する。沢崎は事件後に神宮寺と言葉を交わし、彼に対する憎しみが薄れていくのを感じる。
神宮寺の打率を上回り、首位打者確定となったが、優勝のかかった最終戦に沢崎は志願して出場する。
狙うのは全打席ホームランとチームの優勝。疑心暗鬼から立ち直った沢崎は神がかり的な活躍をする。
サスペンスとして面白いし、最終試合の劇的な描写は野球ならではの興奮が伝わってくる。
漫画では多いが、小説でプロ野球を題材にしたものは意外に少ないのは不思議な気がする。
そんなことを置いても、かなり面白い小説だった。

焔―The Flame (中公文庫)

焔―The Flame (中公文庫)