逃亡くそたわけ

作者:絲山秋子講談社文庫
夏が終わってしまうことに不安感を覚えた「あたし」は、自殺を図り、精神病院に押し込まれる。
「亜麻布20エレは上衣一着に値する」という声が聞こえ始めると、体調が悪くなる。
「あたし」はこのまま入院していても退屈なので、脱走することに決めた。
名古屋出身の「なごやん」を誘い、福岡の病院を出て、彼の車で南に向かうことにした。
なごやん」は東京にこだわりがあるが、「あたし」より症状は軽く、普通に運転ができた。
阿蘇山に向かう途中で、「なごやん」に運転を習い、交代で運転をする。
旅館に泊まることもあれば、車に止まることもあり、二人は薬を飲んで眠る。
ナメクジのような虫に驚いた「なごやん」が「あたし」を見捨てて、車で逃亡するハプニングもあった。
相変わらず、「亜麻布20エレは上衣一着に値する」という声は聞こえるが、解放的な気分になっていく。
二人の旅は、薩摩半島の南端のラベンダー畑で終了する。
不謹慎だが、「あたし」の精神病の発作が出るところが笑える不思議な逃亡小説。
「亜麻布20エレは上衣一着に値する」というフレーズが何度も出てきて、すっかり耳に残った。

逃亡くそたわけ (講談社文庫)

逃亡くそたわけ (講談社文庫)