あかん

作者:山本甲士|小学館文庫
大阪で自堕落な生活を送るヤクザ予備軍のマヌケな若者を描いた連作集。
「たたき」はパチンコ屋の金庫を襲撃しようとする3人の若者の仲間割れの話。
「兄貴」は準構成員の若者が倉庫破りを持ちかけられるが、罠にはめられる話。
ヒットマン」は報復のために対立する組の幹部を襲撃することを命じられた臆病な男の話。
「身代わり」は襲撃事件の身代わり犯人に仕立て上げた若手組員に逃げられた幹部が奔走する話。
かまし」は準構成員と組んで中小企業の経営者をゆすろうとする引ったくりの話。
「おもり」は廃人となった元幹部の守役を頼まれた三下が、金券ショップに押し入る話。
発作的、あるいは無計画に犯罪に走る若者達をコミカルに描いている。
この作品が面白いのは、次の話の主人公が端役で登場して、それがつながっていることだ。
「たたき」に出てきた主人公の後輩が、次の「兄貴」では主役になる。
「兄貴」の主人公に叩きのめされた男が、次の「ヒットマン」の主人公とつながっていく。
で、最後の「おもり」の主人公は最初の「たたき」の主人公と喫茶店で喧嘩となる。
本作は「どろ」や「かび」や「とげ」などの作品に比べると、少し面白さに欠けるが、奥田英郎の「最悪」とか「邪魔」を彷彿させるテイストがある。
今ひとつマイナーな作家だが、タイトルを上手くつければ、売れるのではと思っている。

あかん (小学館文庫)

あかん (小学館文庫)