ランドマーク

作者:吉田修一講談社文庫
埼玉の大宮に建設中の螺旋状の超高層ビルで働く二人の男を描いた話。
設計士の犬飼はホテルに仮住まいしながら、事務所で働く菜穂子と不倫をしている。
鉄筋工の隼人は職人の宿舎に住み込みだが、週末になるとナンパに励んでいる。
犬飼は妻が東京で帰りを待っているのだが、だんだんと自宅に戻らなくなる。
九州出身の隼人は、埼玉の男は東京に出て行きたがるのを不思議に思っている。
犬飼は菜穂子からスワッピングを希望され、隼人は通信販売で手に入れた貞操帯を身につけるようになる。
ありきたりの日常を過ごしながら、徐々に狂気が侵入する様を乾いたタッチで淡々と描いている。
犬飼の妻が実家に逃げ帰った後の、壁一面に貼られた動物の毛皮の奇妙な部屋の装飾。
結末の工事現場にぶら下がった首吊り死体。
この人は雑踏の風景を切り取って描写をするのが上手い。
ただこの作品の主題はイマイチ理解できなかった。読んでいる間は面白く、不思議な気分になるのだけど。
芥川賞を受賞した「パーク・ライフ」にも同じ印象を受けたが、他の作品は面白いと思う。

ランドマーク (講談社文庫)

ランドマーク (講談社文庫)