哀愁的東京

作者:重松清|角川文庫
物語を紡げなくなった中年の絵本作家が主人公の連作集。
進藤宏は新作を書けないまま、40歳を過ぎ、妻と娘に逃げられ、フリーライターで糊口を凌いでいた。
新作を望む編集者のシマちゃんを煩わしく思いながら、取材で様々な人とめぐり合う。
創業した会社を追われそうな青年実業家、ピークを過ぎたアイドル歌手。
浮気をされた雑誌編集長、ヒット曲を出せなくなったメロディーメーカー。
かつての同級生は自分の存在が見えなくなり、痴漢となり、逮捕される。
文章は上手く、話をつくるツボは備わっているので、安定感があり、面白く読めた。
でも、何となく柳沢きみおの漫画を読んでいるような気分になった。
40歳を過ぎ、自分の将来はある程度予測できるようになり、衰えていく体力と気力。
哀愁的東京というタイトルだが、中年男性の哀愁が漂う作品。
この作家は年を取ることを過剰に恐れているような作品が多いので、自殺しないか心配だ。
優しい気持ちと諦めの気持ちは違う。

哀愁的東京 (角川文庫)

哀愁的東京 (角川文庫)