首挽村の殺人

作者:大村友貴美|角川書店
本年度の横溝正史ミステリ大賞受賞作。
岩手県の雪深い寒村に着任した医師の滝沢は、直後から村人の不審死に遭遇する。
熊を獲る罠にかかり死亡した者。地蔵橋の欄干で首を吊った者。
やがて首挽村と忌まわしい名前で呼ばれた過去の出来事をなぞった連続殺人事件であることが明らかになる。
この村は土地が痩せ、何度も飢饉が発生し、その度に弱者を死に追いやった風習があった。
かつて、村で起きた出来事に見立てた殺人ということで、村人は互いに疑心暗鬼となる。
岩手県警の藤田警部補が捜査に臨むが、さらに殺人事件は続く。
そんな中、追い討ちをかけるように、巨大な熊が村人を襲い始める。
藤田は過去に出版された村の民話集に注目する。
閉鎖的な村と過去の暗い歴史と舞台装置は整っている。
加えて、熊が村人を襲うというパニック小説のテイストもある。
ただ、人物描写が弱いのと、色々な要素を詰め込もうとして、散漫になっている。
犯人の殺人動機があまりにもあっけないので、読み終えたときに唖然とした。
読んでいる間は面白かったが、これが大賞受賞作というのには疑問を感じる。
まあ、この賞自体、新人賞みたいなものだから、あまり期待はしていないのだけど。
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