さらば狩人

作者:香納諒一|角川文庫
殺し屋の安本兄弟が、ターゲットの家に侵入すると、すでに誰かに殺されていた。
その直後、安本兄弟に仕事を斡旋している岡村も殺害された。いずれも鋭利な刃物で首を一突き。
岡村の遺留品の手帳から、おかしな行動をとるものはいないか、安本兄弟は調査を始める。
一方、マタギの娘の由紀子は、祖父が無くなり、村がダムに沈むことになっても戻らない妹を探して上京する。
由紀子は妹を探すうちに、安本兄弟に出会うが、ターゲットの家で死んでいた女性だと教えられる。
3人の周りにはヤクザや別の殺し屋や公安やCIAも現れ、妹が何かの陰謀に巻き込まれていたことに気づく。
背後には日米間のコンピュータ業界の主導権の綱引きがあった。
冷酷無比な兄の芳郎と、大男で兄に従順な弟の辰雄に嫌悪しつつ、行動を共にする由紀子。
15年前に書かれた作品なので、コンピュータ業界に冠する記述は古さは否めない。
ただ、殺し屋の兄弟が主人公という突拍子もない設定が意外で面白い。
ところ構わず、銃をぶっ放す兄弟だが、男気があり、由紀子を見捨てないのが良い。
一方の主人公の産業スパイの千々石の屈折した正義感も最後に生きてくる。
古典的なハードボイルド活劇だが、アクションシーンは派手だし、スピード感があった。
無骨な兄弟をどこかコミカルに描いているのがいいのだろう。

さらば狩人 (角川文庫)

さらば狩人 (角川文庫)