夜は一緒に散歩しよ

作者:黒史郎メディアファクトリー
第1回『幽』怪談文学賞長編部門大賞受賞作というので期待して読んだ。
作家の卓郎は妻の三沙子を亡くし、幼い娘の千秋と暮らしていた。
妻の死後、千秋は奇妙な絵を描くようになった。
見えないものを見て描いているようで、出来上がるのは異形を描いたものばかり。
その中でも『青い顔』の女性の不気味さは際立っていた。千秋はこれを「ママ」という。
この絵を何度か見た、卓郎を担当する編集者は、夢に『青い顔』が出てくるといい、失踪してしまった。
千秋はその後、卓郎を連れ、夜の散歩に出かけるようになる。暗い川のほとりで一心不乱に絵を描く千秋。
卓郎の周りで、その絵を見た人は気が触れ、自殺するか変死するようになる。
なぜ、千秋が不思議な絵を描くようになったのか?自分以外の人がその絵を見て、なぜおかしくなるのか?
亡くなった妻の部屋で、壁一面に描かれた『青い顔』を発見し、妻の交友関係を調べる卓郎。
細かな恐怖を積み上げ、不気味な雰囲気に満ちた小説だった。特に新しい妻に向けられる悪意が良い。
読んでいるうちは傑作かもと期待した。だが、そこに至るまでは少し足りなかった。
謎を曖昧にしたままで終わってしまったからだ。そこが残念だが面白い。
次作も読みたいと思う。

夜は一緒に散歩しよ (幽BOOKS)

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