まひるの月を追いかけて

作者:恩田陸|文春文庫
ジャーナリストの異母兄の研吾が奈良で消息を絶った。
異母妹の静の前に兄の恋人の優佳利が現れ、研吾を探しに誘われる。
優佳利とは二度しか会ったことがなかったが、誘われるまま共に奈良に旅立つ静。
史跡を歩けば、研吾とめぐり合うことができると優佳利は言う。
だが、奈良について早々に優佳利は別人だとわかる。
彼女は優佳利の親友の妙子だと名乗る。優佳利は自殺同然の交通事故で死亡したという。
不信感を持ちながら旅を続ける静だが、旅の途中で研吾が現れる。
研吾・優佳利・妙子の3人は奇妙な親友関係で結ばれており、研吾が静を愛しているのではと妙子は疑っていた。
だが、直後に妙子は姿をくらませてしまう。目的がつかめないまま静は旅を続ける。
橿原神宮藤原京跡、明日香村、大神神社東大寺興福寺など奈良の史跡が詳細に描かれる。
自分達の境遇を振り返り、語り合うところは自己憐憫の感じがするが、旅の描写にマッチしている。
合間に挿入される話が、謎を解く鍵になっていることが、結末にようやくわかる。
確かにミステリーだが、この人の作品は、書かれている会話・文章の雰囲気に共感できるところに本質がある。
多作でくだらない作品もあるが、本作は「ネバーランド」「夜のピクニック」と並ぶくらい面白い。
研吾の失踪の理由が判明する結末は気持ち悪いけど。

まひるの月を追いかけて (文春文庫)

まひるの月を追いかけて (文春文庫)