宿敵

作者:小杉健治|集英社文庫
弁護士組織のトップの全弁連会長選挙をテーマにしたサスペンス。
話は次期会長の有力候補の河合が、懲戒処分中の弁護士の川田に刺されるところから始まる。
河合の選対委員長の北見は、河合を貶める対抗陣営の陰謀に気づき、密かに調査を開始する。
弁護士会の中では司法に協力しようとする勢力と、あくまで市民の側にたつ勢力がある。
北見は市民派の弁護士で、正義感にあふれるが、野心も人一倍あった。
対立する候補に、若手エリート検事の若宮の影がちらついているのを見て、北見はますます対決心を強める。
北見と若宮は幼馴染で、学生時代から司法研究所まで、常にライバルだった。
互いの陣営は、ライバルの醜聞を暴きたて、無党派層を取り込もうとする。
学者から弁護士に転向した望月はこの権力争いに嫌気が差し、別の候補を模索する。
この小説は、弁護士会の権力争いだけでは終わらず、政界工作による犠牲者の話もあり、重厚な雰囲気になっている。
弁護士という正義の存在の中にある醜悪な闘争がテーマだが、一方で過労死問題も取り上げており、立体的な作品だ。
結末が尻すぼみの感があるけど、一応希望は持たせている。この作家はいい小説を書くと思う。

宿敵

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