山背郷

作者:熊谷達也集英社文庫
東北地方で過酷な職業に従事する人たちを描いた短編集。
「潜りさま」は洞爺丸沈没事件で活躍する潜水夫の話で、潜水の危険にはリアリティがあった。
だが、次の「旅マタギ」は少しがっかりした。これは話が面白くないわけではない。
傑作の「邂逅の森」の習作のような内容だったからだ。同じような作品を短編で読んでも面白くない。
「邂逅の森」を読んでいない人は面白いだろうが、逆に先に読むと、「邂逅の森」は白けてしまう。
犬を題材にした作品も2作収録されており、これも他の長編に順ずる内容だ。
ただ、船乗りを題材にした「モウレン船」と「川崎船」は面白い。
熊谷達也の作品を全く読んだことの無い人には、非常に面白い短編集だと思う。
でも、既に読んだことのある人は面白くないと思うだろうし、これから長編を読む人にはオススメできない。
何とも悩ましい作品だ。

山背郷 (集英社文庫)

山背郷 (集英社文庫)