幽霊人命救助隊

作者:高野和明|文春文庫
浪人生の裕一は、円柱形の山を登っていた。頂上には男女3人がいた。
老ヤクザの八木、小柄な中年男の市川、覇気のない美貌の女性の美晴。
彼らはいずれも自殺しており、ここは天国だと言う。裕一は受験に失敗し、首を吊ったことを思い出す。
そこにパラシュートで神が降りてきて、100人の人命を救えと命じる。
現世に戻された4人は、人命救助隊として、自殺しそうな人を救う任務に当たる。
幽霊である彼らは、対象者に直接的に働きかけることはできないが、様々な方法で自殺を食い止める。
スリルがあり、物語としても非常に面白いが、自殺という重厚なテーマを扱っているのが興味深い。
この小説に出てくる自殺志願者は人間関係、健康問題、経済的貧困の3つに原因が集約される。
借金を背負い、自殺を余儀なくされるケースでは、金融機関を痛烈に批判しているが、これには納得。
7週間で99人の自殺志願者を救った4人だが、最後のレスキューは裕一の父親だった。
息子を自殺させた自責の念と、出世争いに敗れた絶望感から、故郷で自殺しようとする父親。
この作家は「13階段」でもそうだったが、タイムリミットを設定する小説の描き方に特徴がある。
寡作だが、「グレイブディッガー」も「K・Nの悲劇」も面白い。
タイトルをもう少しひねればよかったのにな。