グリズリー

作者:笹本稜平|徳間文庫
北海道警SATに所属していた城戸口は、根室半島の小さな警察に勤めていた。
彼は立て篭もり事件の犯人を射殺し、裁判にかけられた過去を持っていた。
雪山に入ることで、癒しを求めていた城戸口の前に折本が現れた。
折本は城戸口が射殺した強盗犯の共犯で、自衛隊の元エリートだった。
折本は城戸口に「いずれ射殺してくれ」とメッセージを残す。
過去に殺人を犯した経緯を持つ公安警察の清宮は、折本の存在に気づき、捜査を始める。
折本にはNプランという国家転覆を狙ったクーデターを計画して、自衛隊を追放されていた。
その後、過激派の幹部が連続して殺害され、自衛隊の輸送トラックが襲撃される。
「グリズリー」というコードネームをつけられた折本は、CIAからも追われることになる。
アメリカの核を無力化するために、一人で戦争を仕掛ける折本の活躍を描いたサスペンス。
日本が舞台だが、アメリカの特殊部隊との海や山での戦闘シーンの描写には迫力がある。
だが、主人公は折本では無く、心に傷を持った城戸口と清宮という二人の刑事だ。
この設定により、作品を一段と厚みを増している。
国際的な冒険・謀略小説の書き手として、今一番面白い作家だと思う。
この作品も「太平洋の薔薇」「天空の回廊」と同じくらいの傑作だ。

グリズリー (徳間文庫)

グリズリー (徳間文庫)