カラ売り屋

作者:黒木亮|講談社
経済小説は読まないのだが、日経ビジネスオンラインの記事が面白かったので購入した。
(「地方の闇〜詐偽師Xと夕張市〜」という記事で、会員登録しないと読むことができない。)
この本には「カラ売り屋」「村おこし屋」「エマージング屋」「再生屋」の4作が収録されている。
「カラ売り屋」はニューヨークで投資会社を経営する男が、ずさんな工事をする日本企業を追い詰める話。
企業の弱点をつくためにセスナ機をチャーターし、現場を俯瞰する行動力。
それに比べ、海外の労働者を奴隷のように扱う日本企業の社員の危機感のなさの対比が面白い。
「村おこし屋」は詐欺まがいの行為を繰り返した男が、地方交付税に目をつけ、村おこしに乗り出す話。
この本を買うきっかけになった記事の作品だが、詐欺師の上を行く、田舎の権力者にはあきれてしまう。
公共工事の予算を取ってくるのが首長の仕事で、無駄な建設物や道路を作り続けるという意識にはムカつきさえ覚える。
エマージング屋」は開発途上国の調査をし、融資をするために駆けずり回る銀行員の話。
特権階級にいるイギリス人を皮肉り、挙句のはてに爆弾テロに巻き込まれる波乱万丈のストーリー展開。
「再生屋」は過剰投資で、債務超過に陥った和歌山の白浜のホテルの再生計画案をまとめる弁護士の話。
無責任な公的金融機関や地方銀行、スポンサーとして手を挙げる怪しげな企業、混乱する従業員。
「カラ売り屋」はまあまあの内容だったが、それ以外の3編は非常に面白かった。

カラ売り屋 (講談社BIZ)

カラ売り屋 (講談社BIZ)