赤朽葉家の伝説

作者:桜庭一樹東京創元社
鳥取西部で製鉄所を営む一族の3代の女性を描いた大河小説。
3部構成で祖母、母、子供の章に分かれているが、いずれも子の瞳子の視点から描かれている。
祖母の万葉は、製鉄所の近くに捨てられたサンカの子供で、製鉄工の職人に育てられた。
大柄な美人に育った万葉は、文字が全く読めなかったが、人の未来を見通す不思議な能力を持っていた。
製鉄所の経営者の女主人との偶然の出会いで、赤朽葉家に嫁入りした万葉。
未来を見通す能力は、家族の死も見通してしまい、幸せに暮らすことができなかった。
万葉の子供に生まれた毛鞠は、母の体格を受け継ぎ、大柄で、喧嘩っ早い性格で育った。
喧嘩で頭角を現した毛鞠は、レディースの頭として、中国地方の統一を目指す。
だが、親友の死と共に不良から足を洗い、少女漫画家として売れっ子となる。
落ち目の製鉄所を救ったのは、毛鞠の印税で、製鉄所は新しい会社に生まれ変わる。
毛鞠は瞳子を産むが、子供を顧みず、漫画の連載が終わった途端に、突然死を遂げる。
第3部は瞳子が、祖母の万葉の死を見取り、現在を生きるシーンが描かれる。
祖母の不思議な能力、母の圧倒的なパワーに比べると瞳子は余りにも平凡だった。
1部、2部と面白かっただけに、3部の過去を振り返るだけの展開はつまらなかった。
登場人物の名前や行動は不思議な感覚になるし、時代をなぞる記述もいい。
第2部まで読んだときには、「これは傑作かも」と思ったが。

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説