黄金旅風

作者:飯嶋和一小学館
江戸初期の鎖国直前の長崎を舞台にした歴史小説。とにかく面白かった。
かつて悪童と称された二人の町人が、私服を肥やそうとする西国大名と幕府に立ち向かう話。
当時の長崎の貿易家達が、支配者層の武士たちよりも、世界の状況を把握し、奔放に行動している様が良い。
彼らには棄教を迫られたとはいえ、キリシタンの「神の前では自由平等」という考え方がベースにあった。
武士のように体面を重んじることはなく、柔軟な考え方ができ、アジアで自由に貿易をしていた。
幕藩体制が固まりつつ、重苦しい雰囲気に覆われてきた時代だが、長崎の民のために二人は奔走する。
そんな長崎に悪代官として名高い竹中重義が着任する。私財を肥やし、隠れキリシタンを弾圧し始める。
仲間の町人は牢に入れられ、雲仙普賢岳で処刑される。
竹中を排除するために、手段を講じる二人だが、幕閣に訴えることができたのは一人だった。
島原の乱の前に、自治都市を作ろうとした男達の物語。
始祖鳥記」も「雷電本記」もそうだが、反骨心に溢れる市井の人を魅力的に描いている。
寡作の人だが、いずれの作品も悲劇だが、魅力的で、深い読後感が残る。
読まないと損だと思うな。


黄金旅風

黄金旅風