すじぼり

作者:福澤徹三角川書店
これは面白かった。今年読んだ本のなかではベストの1冊。
おちこぼれの大学生が、ふとしたきっかけでヤクザと知り合い、破滅に向かう話。
北九州に住む大学生の「僕」は、三流私立大学で燻り、就職も決まらない日々を送っていた。
ある日、友人と共にクラブでトラブルを起こした「僕」はヤクザの組長の速水に助けられる。
その後、パソコンの家庭教師として、速見の組に出入りすることになる。
ひと夏だけのバイトだと割り切っていたが、若頭の武石や見習いの松原と親密になる。
離れがたい気分になった「僕」の送別会で、松原が射殺される。
共に復讐をしようと速水に申し出るが、暴力で激しく拒絶される。
「僕」は密かに武石と連絡をとり、行動を共にするようになる。
だが、速水総業を狙ったヤクザは強大な勢力で、次第に劣勢に追い込まれる。
ヤクザの速水、武石、目黒、尾崎、松原の人物描写が非常に良い。
「僕」を取り巻く人間関係も上手い。
タクシーの運転手をしている父親との不和。奈菜という訳ありの彼女。
馴れ合いだと思っていた大学の知合い達の土壇場での友情もいい。
それと、「僕」が拉致され、凄惨な拷問を受けるシーンはかなりのアクセントになっている。
拷問メニューを説明するところだけでも、恐怖感はかなりのもの。さすが怪談作家。
結末の寂しさはやりきれないが、青春小説としても傑作だと思う。
もうじきメジャーになる作家だろう。

すじぼり

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