呪いの塔

作者:横溝正史|徳間文庫
江戸川乱歩の作品は全て読んでいるが、横溝の作品はポツポツと読み漏れがある。
で、この作品も初めて読んだ。作者が結核療養する前、昭和の初期に書かれた作品。
推理作家の大江黒潮から、軽井沢の別荘に誘われた編集者の由比耕介。
別荘では子爵や映画女優たちが滞在し、退廃的な遊びに興じていた。
耕介が加わり、近くにある木製の塔で、仮想殺人劇を演じることになる。
役割どおりに劇は進むが、大江黒潮は塔の階段で殺害される。
塔に住む4本指の怪人や、素人探偵の白井三郎の存在など、当時のドロドロとした雰囲気は楽しめる。
複雑なストーリーではなく、さらさらと読める。時間つぶしには悪くなかった。
だが、埋もれた名作という雰囲気でもなく、正直そんなに面白くない。
編集者の耕作が、耕作という名前にも関わらず、狂言回しになっているのは面白い。

呪いの塔 (徳間文庫)

呪いの塔 (徳間文庫)