グローブ

近々、野球の試合に出場することになった。
押入れからグローブを引っ張り出した。
もう10年近く手にしていなかったが、すぐに手に馴染んだ。
野球は好きだけど、グローブに手を通すと、挫折が甦る。
高校で野球部に入ったものの、わずか3ヶ月で退部してしまった。
練習がきつかったわけでなく、肩を痛めてボールが投げられなくなったのだ。
というのは言い訳で、本当は練習から逃げ出したかったのだと今では思う。
「途中でケツを割った」と誰かから非難された訳ではないが、格好悪かった。
大学に入り、町内会やバイト先の野球チームに入った。
気楽な気分でプレイしていたら、肩に驚くような痛みが来た。
「あれ、肩は壊れたままなんか?」
その後も何年かブランクをおいて、調子に乗って野球の試合に出た。
何球か投げると、やはり肩が激しく痛んだ。
東京での初試合という楽しみと、もうそろそろ大丈夫だろうと楽観的観測。
グラブをはめて、慣らしていると、気分が高ぶってくる。