上高地の切り裂きジャック

作者:島田荘司|文春文庫
上高地で女優が殺害され、死体が遺棄される事件が発生する。
絞殺された死体は、腹部が切り裂かれ、内臓の代わりに石が詰め込まれていた。
体内に残った精液から、横浜の病院の御曹司が逮捕される。
だが、犯行時に彼には完璧なアリバイがあり、殺人を犯すのは不可能だった。
刑事から相談を受けた石岡はストックホルムの御手洗に電話をかける。
御手洗は死体の蛆の写真に鍵があるという。
鮮やかな推理の中篇だが、少し雑な感じがした。
この本には、もう1篇の作品「山手の幽霊」が収録されている。
こちらは初期の怪奇的な雰囲気が残った佳作。
医者の卵が住む家の地下から餓死した死体が発見される。
身元は以前この家に住んでいた主人だった。
だが、死亡推定時刻の後も主人の姿は街の人たちに目撃されていた。
同じ頃、電車の運転手の内海はトンネルの中で、女性の幽霊を目撃。
内海はノイローゼになり、妻が幽霊探しを御手洗に依頼する。
女性の幽霊の姿が、餓死した男の娘に酷似していることをつかむ御手洗。
トンネルの上にある医者の卵の家の隠し部屋を暴き出すところは面白い。
他の作家なら面白い作品なのだが、島田荘司にしては少し期待はずれ。

上高地の切り裂きジャック (文春文庫)

上高地の切り裂きジャック (文春文庫)