駐在刑事

作者:笹本稜平|講談社
捜査一課で挫折を味わった刑事が、奥多摩で再生されていく姿を描く短編集。
取調べ中に、被疑者に目の前で自殺された江波は、自ら望む形で青梅に赴く。
そこで出会う旅館の親子や、出戻りの図書館司書、スーパーの娘との交流。
山に絡んだ事件を丁寧に描いていた人情小説になっている。
特に遭難した父を追う少年の話や、介助犬との交流の話は特にいい。
人情モノとしては悪くないが、でも、この作者にしては迫力が欠ける。
傑作「太平洋の薔薇」を読んだ後では、物足りなく感じても仕方が無い。
ます、主人公の江波の人物描写が鮮明ではない。
周りの人物を先に出して、次作への複線にしているのかと少々期待している。
この作者の小説を初めて読むのなら、この作品は決してハズレではない。

駐在刑事

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