押入れのちよ

作者:荻原浩|新潮社
この人には珍しいホラー短編集。色んなテイストがあるが散漫な印象だ。
死者と残された人の立場が劇的に入れ替わる「コール」は傑作だと思う。
表題作の「押入れのちよ」もほろっとする人情話で、面白い。
ただ、他の6作品ははっきり言って、荻原浩にしては面白くない。
異形の姿が明らかになる「お母さまのロシアのスープ」
お互いが山菜や魚介類を持ち寄り、鍋料理で相手を殺そうとする「殺意のレシピ」
呆けたはずの義父が復讐に立ち上がる「介護の鬼」
愛人をふとした拍子に殺してしまい、おろおろする男の姿を描いた「予期せぬ訪問者」
内容は悪くないのだが、荻原浩にしては、笑える表現も控えめだ。
寄せ集め作品だなと思う。