愚行録

作者:貫井徳朗|東京創元社
オビに「慟哭」「プリズム」に続く第三の衝撃と書かれた、真っ黒な単行本。
自分はこの作家の全ての作品を読んでいる。ハズレのない作家だ。
東京の閑静な住宅地で起きた一家四人皆殺し事件。いきなり元ネタがある。
犯人は捕まらないまま、様々な報道関係者が押しかける。
その事件の取材に応じる関係者の独白で、物語は進む。
殺された妻と夫の知り合いの話は、いずれも被害者に原因があるかのような話。
このエピソードが非常に面白い。明らかに「プリズム」の手法をなぞっている。
読んでいくうちに、被害者の方に非があるように思わせる構成は上手い。
各章の最後に挿入される妹が兄に語りかける話は、本題となかなか結びつかない。
最後に冒頭のページが何を意味するのか、鮮やかに浮かび上がる。
非常に面白い構成で、とにかく読ませる内容だった。読んでいるうちは面白かった。
ただ、技巧に頼りすぎの感もあるのが少し残念。面白いことは面白いのだけど。
自分の中では今でも「慟哭」と「迷宮遡行」がベストかな。

愚行録

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