うなぎ鬼

作者:高田侑|新潮社
危ない街と、そこに蠢く人たちを描く暗黒ミステリー。
主人公の勝は192センチ、112キロというプロレスラー並みの体格。
借金を背負い、借金の取立てやデリヘルの運転手をしている。
見た目もガタイも立派なのに、気が弱くビビリというギャップが面白い。
ある日、雇い主の千脇から、黒牟という町に荷物を運ぶことを命じられる。
その町は悪臭が漂い、人気はなく、届け先は鰻の養殖場だった。
養殖場の責任者の男には、親指以外に指はなく、従業員も不気味な雰囲気。
特に秀さんと呼ばれる男は、送電線作業の事故のため、顔が黒焦げだった。
不気味な雰囲気の町とそこで働く人の描写は、新堂冬樹やヤンソギルを彷彿させる。
最初から荷物の中身が人間の死体ではという疑問を抱き、ビビる主人公の勝。
そんな仕事を続けているうちに、仕事仲間が失踪し、勝はデリヘル嬢とトラブルを起こしてしまう。
あまり共感のできない主人公の勝の陥る窮地は、かなり痛そうで嫌な気分になる。
今年出版の本で、それほど話題にはなっていないけど、これは面白い。

うなぎ鬼

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