魔人の遊戯

作者:島田荘司|文春文庫
御手洗潔が探偵役を演じる定番モノで、舞台はスコットランド
長年、精神病院に幽閉されていた男が、故郷の村を精細に描き始める。
城の石垣の数や角度や、木の位置まで正確で、サヴァン症候群と思われた。
絵の中には不思議なところがあり、ところどころに女性の顔が描かれていた。
同じ時期に、その絵と同じ位置に引きちぎられた女性の死体が発見される。
絵に描かれた通りに次々と女性が惨殺されていく。
霧に包まれた街、殺人が起きるときに聞こえる街を覆う咆哮。
事件のベースには迫害されたユダヤ人の歴史があった。
そんなミステリアスな雰囲気をアル中の作家がコミカルに記述していく。
十分に面白い作品だが、島田荘司の御手洗シリーズとしては物足りなさを感じた。
デビュー作「占星術殺人事件」は未だに色褪せない傑作だし、
その後の作品を面白い順番に並べると、
暗闇坂の人喰いの木」「眩暈」「アトポス」「水晶のピラミッド」
となるかな。
亜流がたくさん出ているのも、この人の功績だと思う。

魔神の遊戯 (文春文庫)

魔神の遊戯 (文春文庫)