エンブリオ(上・下)

作者:箒木蓬生|集英社文庫
エンブリオとは受精後八週までの胎児。医学の常識を覆す実験をする医師の物語。
九州の風光明媚な土地にサンビーチ病院を構える院長の岸川が主人公。
優しい人柄と確かな腕前で、患者からは慕われているが、裏の顔を持っている。
流産してしまった胎児を処分せずに、病院地下にあるファームで培養をしている。
不妊に悩む夫婦には培養した人工授精児を与え、神のような医師として敬われる。
だが、その裏で、ホームレスの男性に受精卵を埋め込んだり、
自分の意にそぐわない関係者を密かに殺したり、マッドドクターぶりを発揮する。
モナコの学会で「男性の妊娠」を発表すると、絶賛の嵐に包まれるが、
帰国後、彼の技術を盗もうとする米国の企業の手が伸びてくる。
岸川には共感できないし、破滅が見たかったのだが、面白い作品。
医学、ギャンブル、裁判など、今まで自分の知らなかった薀蓄話がいい。

エンブリオ 1 (集英社文庫)

エンブリオ 1 (集英社文庫)