水の時計

作者:初野晴|角川文庫
ワイルドの「幸福な王子」をベースにした、第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
暴走族の頭のすばるは、大学生との乱闘事件から逃れる途中、ある老人と出会う。
老人に廃病院に導かれ、脳死状態の少女葉月と対面する。
葉月は月夜のときだけ、特殊な装置を使い、言葉を話すことができた。
自分の臓器を必要とする人に与えたいと告げられたすばるは、行動を開始する。
眼から光が失われていく小さな妹を気遣う姉。腎臓売買のルートを追うルポライター
心臓病に冒され、余命幾許もない元教師のもとから失踪した妻の謎。
すばるはこういった人たちにバイクで葉月の臓器を届けることになる。
臓器を求めている人と周りの人たちの病と向き合う姿勢はドラマチックだ。
葉月が脳死状態になった原因は最後に明かされるが、
すばるの描き方をもう少し丁寧にしていれば傑作になっただろう。

水の時計 (角川文庫)

水の時計 (角川文庫)