黒冷水

作者:羽田圭介河出文庫
17歳の作者が書いた第40回文藝賞受賞作。
『兄の部屋を偏執的にアサる弟と、罠を仕掛けて執拗に報復する兄。』
仲の悪い高校生と中学生の兄弟の確執は不愉快になるくらいエスカレートする。
兄は弟に対して、剃刀を使ったトラップを仕掛け、弟の手を傷だらけにする。
また、自室に監視カメラを仕掛け、弟の自慰シーンを撮影し、両親に見せつける。
弟は何とか兄の弱みを握ろうとするが、状況は不利なままだ。それでもアサる。
兄の意を勝手に汲み取った後輩の青野の攻撃が弟を徹底的に破壊する。
17歳にしては文章が上手く、テンポもよく、残酷なことを考え付く才能がある。
でも、すぐそばにいるはずの両親の存在があまりにも希薄だった。
作者の年齢なら、親を疎ましく思ったりするなと単純に思わせるところは残念。
とは言え、終わったと思った作品が2回再生される構成は悪くない。

黒冷水

黒冷水