かたみ歌

作者:朱川湊人|新潮社
直木賞を受賞した「花まんま」は大阪が舞台だけど、こちらは東京の下町だ。
今から30年から40年前のアカシア商店街を舞台にした短編集。
花まんまと同じように身近に現れる幽霊が主題だが、ファンタジーだと思う。
当時の流行をさりげなく書いているのもいい。7つの短編はいずれも面白い。
特に幼い兄が弟を守ろうとする「夏の落し文」が良かった。
短編だが連作になっていて、毎回登場する古本屋の素性が最後に判るのもいい。
今のところ外れの作品のない作家だ。

かたみ歌

かたみ歌