殺人症候群

作者:貫井徳朗|双葉社文庫
700ページを超える長い作品。でも、これはとても面白かった。
この人の作品は面白いが、これはたぶん代表作になるだろう。
未成年や精神異常者に身内を殺された遺族のために殺人を請け負う男女。
心臓病の息子を救うために、ドナーカードを持つ人を殺していく中年看護婦。
不審な事件を追う警視庁内の秘密チームと、地道な捜査を行う刑事二人。
この4つの視点が交互に絡みながら小説は進む。
自分の大切な人をひどい形で命を奪われた無念さを過剰なくらい重ね綴る。
だから殺人をする側に、何とか逃げてくれと思わせる話の運び方はうまく、
終盤の教会で妻子が殺される前の幸せな日々を思うシーンは美しい。
重要な人物が意外な形で命を落とすところも期待を裏切って面白い。

殺人症候群 (双葉文庫)

殺人症候群 (双葉文庫)