あふれた愛

作者:天童荒太集英社文庫
寡作なベストセラー作家の短編集。
永遠の仔」も「家族狩り」もそうだけど、この人の作品の登場人物は、
過剰なまでに真摯に生きることに向かい合っている。
そのことが息苦しく、自分の周りにいれば付き合いたくないと思う。
この作品もそういった人物が出てくるが、少しだけ緩和されている。
従順だと思っていた妻から離婚を切り出される男の第1話。
その後の2作は精神を病んだ人たちの話。読むのが辛くなる話だ。
最後の話はコンビニで突然死した男の未亡人に横恋慕する少年の話。
これは軽くて良かったと思う。
毎度、何かを押し付けられるような重苦しさを感じる。
生きることは、そんなに辛いことではないと反発したくなるが、
この人の小説は面白い。