怪の標本

作者:福澤徹三|ハルキ・ホラー文庫
個人的に注目している怪談作家の短編集。これも良い雰囲気だった。
表題の「怪の標本」は作者が身近な人から聴いた怪異を書き並べたスタイル。
どこかで聴いたような話もあるが、これはこれで面白かった。
玄関に現れた女性の首を鎌で切り落とすところから始まる「雨音」は、
幻想的な雰囲気はあったが、この本のなかではイマイチだった。
「受刑者」は現状に不満を持つ中年サラリーマンが居酒屋で、
医者を名乗る男と時間と命に関する会話をする。この会話がとても面白い。
居酒屋を出た後、交通事故で記憶喪失になる主人公は皮肉な形で医者と対面。
「四十九日」は妻を癌で失った男の話で、大事な人を失う辛さを淡々と綴る。
どこが怪談なのだろうかと思うが、最後の1ページで意外な結末。
「訪問者」はインターネットを題材にした怪談。
死は身近なところにあることを伝えるのが非常に上手いと思う。

怪(あやし)の標本 (ハルキ・ホラー文庫)

怪(あやし)の標本 (ハルキ・ホラー文庫)