夜の底

夜の街に魅力を感じなくなった。
10年ほど昔は自転車に乗って、週に2回はキタやミナミ、天王寺大国町を徘徊した。
体が疲れたり、冷えたりすれば、どこかで酒を飲んだ。
それが最近では夜自転車に乗らなくなった。飽きてしまったのだ。
東京に出てきて、環境が変わっても、夜に出歩こうとは思わない。
昔は夜にふらふらするのが好きだった。
暗闇の中を、ひんやりとした風を浴びながら自転車で進むのが好きだった。
道路の街灯から映し出される夜にしか見えない銀色を見るのが好きだった。
誰もいない公園で、月の光を浴び酒を飲むのが好きだった。
夜の道はどこまでも続いているような気がした。
時間はゆっくりと流れていた。
寂しさより、一人で夜の底にいることがたまらなく自由だと感じた。
でも今はもう、夜に自転車に乗ることはない。歳をとったのかなぁ。