幻の漂白民・サンカ

著:沖浦和光|文春文庫
これは面白い本だった。
サンカがいつ発生したのかを検証した内容。
サンカの起源は
【1】先住民の山人系ー『記紀』や『風土記』に見られる土蜘蛛
【2】室町期の賎民系の集団ークグツやササラ
など説があるが、この本では、
【3】幕末危機の時代に発生
したと主張している。
その理由として、エタ・非人・河原者・坂の者・夙の者など、
雑種賎民集団に対する記述は過去よりあるのに、
サンカに関する記述が明治以降にしか見られないこと、
また、江戸幕府による宗門改制度による戸籍管理の強化により、
人別帳から外れる集団はまず、ありえないことが挙げられている。
筆者は天保の大飢饉による山間部の百姓が逃散して野非人になったのが
発生の起源と説く。
サンカの無文字文化・口伝と伝承というのは、伝統ではなく、
それだけの歴史がなかったと逆説的に記述する。
さらにサンカの発生起源は鳥取・島根・広島の山間部からと書いてあった。
過去の資料を引用しつつ、これをきちんと訳しているのでわかりやすかった。
大阪出身なので、差別問題に関しては、どちらかといえば、
ネガティブなイメージを持っているが、これは面白かった。

幻の漂泊民・サンカ (文春文庫)

幻の漂泊民・サンカ (文春文庫)