楽園のカンヴァス

作者:原田マハ新潮文庫
フランスの画家ルソーを取り上げた美術ミステリ。
ニューヨークの美術館に勤めるティム・ブラウンは、スイスの伝説的な富豪から招かれる。
富豪のバイラーは美術品の収集家としても知られ、彼の保有するルソーの画の真贋を依頼される。
日本の気鋭の研究家の早川織絵も同じ依頼を受けており、二人はある書物を読むことになる。


その内容は、第一次大戦前のフランスで、ルソーが税関を辞め、本格的に画家として活動を開始したところから始まる。
同じアパートに住む女性にモデルを依頼するが断られ続けている。
新しい芸術の波がやってきているが、ルソーの画は素人画家のものとしてまったく評価されない。


ティムと織絵は書物を1日に一章ずつ読み、1週間後に真贋を判断してもらいたいとのこと。


ルソーの画は画壇では評価されなかったが、若き画家のピカソや詩人たちに評価を受ける。
大戦前の自由な雰囲気のあふれるパリで、ルソーはモダンな画を書き続ける。
いつの日かマンションの住民のヤドヴィカをモデルに描くことを夢見て。


出自がライバル陣営同士なのでティムと織絵は最初はギクシャクした。
ただ、同じルソーの研究家同士、いつしか情報交換をするようになる。



画の真贋と、ルソーの生き様を思いめぐらせる素敵なストーリー。
山本周五郎賞受賞作で、一風変わったミステリだが、文句なしに面白かった。
芸術に興味のない人も、ルソーってどんな絵を描いた人だと調べたくなると思う。
ティムと織絵が友情を育むシーンも良い。


楽園のカンヴァス (新潮文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)