函館売ります(上・下)

作者富樫倫太郎|中公文庫
明治維新直後の函館を舞台にした国際謀略小説。
土方歳三旧幕府軍は、函館を奪還するが、財政難にあえいでいた。
ロシアはプロシア人の実業家兄弟を操り、広大な土地を奪取しようとする。
函館には幕府軍に与しようとする金十郎と、
新政府軍とともに海外の脅威を取り除こうとする順三郎が対立していた。
金十郎は目明し、順三郎は裁判所に勤めていた。
対立する二人だが、ロシアの陰謀に気付き、協力して立ち向かう。
集まった仲間は50人で、軍事については素人集団だった。
そこに土方歳三が加わり、綿密な計画を立て、金の引き渡し場所を襲撃する。


函館降伏前に起きた「ガルトネル事件」をベースにしているが、展開は面白い。
国を憂う順三郎と金十郎と、死に場所を探す土方の生き様が熱い。
幕臣たちの人物描写も上手く、長編だが飽きさせない構成力は見事。