A3(上・下)

作者:森達也集英社文庫
オウム真理教の教祖麻原彰晃の裁判を追ったルポで、第33回講談社ノンフィクション賞受賞作。
判決の日に麻原の人格が完全に壊れていることを目撃した作者は、麻原の周囲を調べ始める。
死刑判決を受けた幹部にインタビューをして、教団の麻原の影響力を確認していく。
問答無用かつ、早急に麻原を死刑にしようとする流れに一石を投じる内容となっている。
90年代後半から、会話ができなくなり、歩くこともできない。
娘の前で、自慰を始める異常な行動に、筆者は、麻原に薬物を投与されたのではと考える。
オウム幹部や麻原の杜撰な計画と、ピュアともいえるその後の言動。
オウムの背後に北朝鮮とかロシアの影があることを匂わせるが、そのことの追及はない。
むしろ、麻原の異常な状態のまま、裁判を続ける日本の司法に対する憤りがテーマとなっている。
確かに、サリンをまいたことに対して、動機は明らかになっていない。
麻原や幹部が死刑になることに疑問は無いけど、社会の変容に対しては納得できる部分は多い。


A3 上 (集英社文庫)

A3 上 (集英社文庫)