絞首刑

作者:青木理講談社文庫
1994年に大阪と名古屋、岐阜で起きた連続リンチ殺害事件。
当時19歳の少年3人に死刑判決が下った。彼らと面会した作者のルポ。


冒頭、死刑当日の風景が描かれる。
これは、作者が様々な関係者に取材し、構成したものだが、緊迫感にあふれている。


死刑が確定した少年たちも30代半ばとなり、一人ひとりに話を聞くが、後悔ばかり。
「いきがっていて、自分から止める勇気が無かった。」


彼らの取材の合間に、実際に起きた4つの事件と死刑執行までを検証する。
「栃木今市市4人殺傷事件」は元妻との復縁を望み、親族を殺害した事件。
死刑となった男は殺害当時、覚せい剤による心身喪失状態であったと思われる。
刑確定後、キリスト教に入信し、車いす生活になった70代に死刑執行。


「愛知・保険金殺人」は死刑確定後に被害者の兄に謝罪を続けたケース。
真摯な死刑囚の謝罪に、被害者の兄は、この死刑囚を殺さないでほしいと訴える。
被害者兄に対するバッシングも発生し、死刑は執行される。


「埼玉・熊谷4人殺傷事件」は、少女にそそのかされ、風俗店の店長を殺害。
その現場を見られたとして、隣室の女性3人を拉致し、殺傷した事件。
この犯人は、警察と検察に対する強烈な不信感を持っていた。
「死刑を受け入れる代わりに、反省はしない」と言い残し、刑執行。
最近の事件で、強烈な悪人顔だったことを記憶している。


「福岡・飯塚女児連続殺人事件」は本人が罪を最後まで認めず、DNA鑑定が決め手になり、死刑が執行されたケース。
同じような事件で、栃木県の幼稚園バス運転手が無罪を勝ち取っている。
これは冤罪ではなかったのかと思えるし、否認を続けた死刑囚に対しての執行も早過ぎる。
冤罪を想わせる。


エピローグの中で、死刑囚の元少年の一人との面会時の隠し撮りの写真が掲載されている。
泣いているのか絶望しているのか、何となく、見てはいけないような気分になる写真だ。


自分は存続を支持するが、死刑制度について考えさせられる作品。



絞首刑 (講談社文庫)

絞首刑 (講談社文庫)