神の手(上・下)

作者:久坂部羊幻冬舎文庫
京都の公立病院で外科部長を務める白川は、21歳の末期がん患者を安楽死させる。
患者の苦しみを見るに見かねての措置だった。
だが、白川は母親のジャーナリスト康代から告訴される。
当初は病院内の権力闘争だったが、白川にとって都合の悪い証言が出てくる。
逮捕寸前に、白川は不起訴になる。背後には新しい医療制度を推進する組織があった。


高齢化による医療費の増加と、過疎化による医師の不在。
医療の問題を解消するため、ドイツ帰りの医師、新見を代表とするJAMAという組織が立ち上がった。
弁舌さわやかな新見は、世論の賛同を得て、新たな医療を模索する。


白川による安楽死を、今後の医療の流れにしてしまおうとする新見。
一方、市民派を掲げる康代達の安楽死を阻止しようとするグループ。


患者の苦しみを理解せずに、頭ごなしに何が何でも安楽死は反対という左翼勢力は気持ち悪い。
この作品は、白川は単なる道化に過ぎないのだが、左翼の自分勝手な論理はデフォルメを利かせていて、面白い。


新見たちは、新たな医療制度を作るため、暗躍し、安楽死が法案として通ることは確実となる。
安楽死に反対する康代達だが、支援者のプライベートが暴かれ、さらに運動家の身に危険が迫る。


安楽死を推進する新見は、世論から支持を受け、日本医師会の解体を始める。



上下巻の長い作品だが、これは面白かった。
左翼の身勝手な論理と、極右の選民思想。どっちも好きになれないが、両者の不毛な争いが良い。





神の手 上 (幻冬舎文庫)

神の手 上 (幻冬舎文庫)