嶽神（上・下）

作者：長谷川卓｜講談社文庫
戦国時代を題材にした伝奇小説。
多十は、山の民だが、仲間たちから絶縁されており、顔に横一文字の傷をつけられていた。
武田勝頼が、天目山で自害するところに立ち会い、遺児の若千代の面倒をみることになる。
北条の風魔、真田の猿、徳川の伊賀モノから、命を狙われるが、並はずれた身体能力で撃退する。
多十は当初、若千代を関西に逃すまでのつもりだったが、同行の家臣が殺されてしまう。
多十は若千代と信濃の山に戻るが、真田一族の攻撃を受ける。
撃退したものの、徳川の忍びの頭領服部半蔵が、多十から若千代を奪い取ろうとする。
当代最強の個性的な忍者たちが、多十と若千代を襲う。
ストーリーは非常に面白く、服部半蔵の配下の忍者たちもキャラが立っている。
暇つぶしには最適な小説だ。ちょっと難があるとすれば、半蔵の部下の忍者が実はそんなに強くないことかな。
絶体絶命のピンチに何度も追い込まれる多十だが、敵はそんなに強くない。
戦闘シーンが多いから飽きることはないのだが、敵の忍者を倒すシーンがあっけなさすぎだな。
と言っても、これは昨今の時代小説の中では、出色の内容だ。
初めて読む作家だったが、他の作品も読みたいと思わせるくらい、ストーリー作りは際立っている。

嶽神(上) 白銀渡り (講談社文庫)