チェーン・ポイズン

作者:本多孝好講談社文庫
30代後半のOLの高野章子は、人生に絶望し、会社を辞め、自殺することを決意する。
誰からもかまってもらえず、ブログでも暴言を書きこまれ、人生に嫌気がさした。
夜の公園で「死にたい」と独り言をもらすと、「本当に死ぬのなら1年待ちませんか」と声をかけられる。
1年経ち、それでも死にたいのなら苦しまずに死ぬ方法を教えるという。
姿ははっきりとわからなかったが、章子は1年後に死ぬことを決め、生活を続ける。
職を失った章子は、ボランティアを手伝うことで、1年後に備えることにした。


雑誌記者の原田はかつての取材対象者が相次いで自殺をしていることに不審を覚えた。
一人は天才バイオリニストで、聴力を失ったことで、バラエティで活躍していたが、1年後に自殺。
もう一人は妻と子供を殺害された被害者遺族で、犯人が処刑され、1年後に自殺。
いずれもステロイド系の毒という一般人には入手しにくい毒だった。
同じころに自殺した高野章子という一般人もステロイド系の毒で自殺していたことに目をつける。
原田は、章子の自殺するまでの足取りを取材しはじめる。


章子は、親のいない子供の施設にボランティアとして顔を出すようになる。
また、ホスピスにもボランティアに赴き、死を迎える患者にその心境を聞く。
1年後の死の準備に備え、淡々と過ごすが、子供の施設の閉園の危機に直面し、自分の死を活かそうと考える。
自分が死ぬことで、施設の子供たちが困らないで生きていく方法はないか?
今までになく前向きに生きているが、死ぬことだけは決めている。


原田は、バイオリニストと犯罪被害者と章子に毒を渡した人物がいると推理して、事件の真相に迫る。
章子の死までの1年。原田の調査と交互に描かれ、緊迫感に満ちている。
で、結末のどんでん返しには驚かされる。
死のうとしている章子がいつしか生きがいを見つけ出す後半部分は感動的だ。
犯人に対する、ちょっとした作中のフェイクは気に入らないが、それでも面白い。


チェーン・ポイズン (講談社文庫)

チェーン・ポイズン (講談社文庫)