悪の経典

作者:貴志祐介文藝春秋
高校教師の蓮見は熱心な教師として、生徒からも教師からも信頼を得ていた。
だが、彼には人の心を素早く読み取り、誰よりも強い支配欲を持っていた。
自分に不都合な人物は教師でも、父兄でも、生徒でも簡単に排除することができた。
話が進むと、蓮見が過去に犯した犯罪が徐々に明かされていく。
それはあまりにも凄惨だが、絶対に自分に疑いがかからない方法で乗り切っていく。
蓮見の罪悪感のなさと思い切りの良さと、自分勝手な解釈は小気味いいほどの描写だ。
そんな蓮見の前に感の鋭い教師や生徒が立ち向かうが、返り討ちにあう。


第9章からサスペンスからホラーに変わる構成は鮮やかで、非常に面白い作品だった。
単行本は上下巻で出され、長い話だったが、一気読みできる。
この作者の最高傑作は「黒い家」だと思うが、それに迫る迫力のクライマックスだった。
ただ、主人公が恐怖を与える側になっているので、「黒い家」ほどの緊迫感はなかった。
簡単に人が死に過ぎるのも、「バトルロワイヤル」を彷彿させる。
それでも背徳的で衝撃的な作品だ。


悪の教典 上

悪の教典 上