今日の特集

作者:戸梶圭太|中公文庫
報道番組の下請けプロダクションのスタッフの苦闘を描いた連作。
性犯罪者のその後、コスプレOL、漂着物を題材にする芸術家。
ラジコン少年、派遣社員のセラピスト。
一応の主人公であるADの明坂が人格崩壊した先輩と共にトラブルに巻き込まれる。
相変わらずの罵詈雑言は健在で、過剰に思えた罵声も、今の時代にフィットしている。
また、文庫本にするにあたり、東日本大震災のエピソードを絡めている。
単に津波の映像だけを映しているマスコミへの批判。
被災地でもないのにヘルメットをかぶって報道するキー局をバカにした態度。
底辺の人間をバカにして、実は主人公も同じレベルだったという作者の持ち味が出ている。
でも、この人の作品はこのパターンばかりで、飽きてきた。
描写は鋭く、かなり笑える台詞もあるのだが、肝心のストーリーはイマイチ。
デビュー作の「闇の楽園」の前向きなストーリーはもう書けないのか?
根本敬の観察眼のようになってしまっていて、少し残念。


今日の特集 (2011-09-22T00:00:00.000)

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