東京難民

作者:福澤徹三|光文社
北九州から上京し、三流私大に通う修は、学費未払いで大学を除籍される。
両親に連絡を取ろうとするが、実家はもぬけの殻。
東京に戻った修は、友人の下宿に転げこむ。
まだ、生きて行くことに楽観的だった。
だが、ここから怒涛の転落が始まる。
不動産屋のチラシのポスティングのバイトは少しの不正でクビになる。
テレアポのバイトでは学生用のクレジットカードを作らされる。
友人とケンカ別れし、ティッシュ配りのバイトをしながら、ネットカフェに泊まる日々。
治験のバイトでそこそこの大金を稼ぐが、歌舞伎町で職務質問に会い、留置所に拘束される。
釈放された日に若い女に騙され、ホストクラブで働く羽目になる。
その後、底辺のホストの生活を送るが、借金を背負わされそうになり、仲間と一緒に逃げ出す。
日雇で住み込みの肉体労働者となり、ささやかな幸せを感じていた。
だが、ホストの経営者につかまり、中国で麻薬の売人として送られることになった。
修は何とかその場を逃げ出すが、次に流れ着いたのはタコ部屋だった。


この作家の話はハズレがなく、本作もスリルにあふれている。
普通の大学生がここまで転落するかという怒涛の不幸の連続だ。
世間知らずで、甘い考えを持っているが、人間としての正義感を最後まで失わないのはいい。
貧困ビジネス、弱者や若者を陥れる詐欺、中国人の麻薬取引など旬の話題も満載。
怪談で新しいスタイルを作った作者だが、本作は今の時点で最高傑作だと思う。


東京難民

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