船に乗れ!

作者:藤谷治|ポプラ文庫
楽家の一族に生まれた津島サトルは、芸高を受験するが、不合格。
祖父が学長を務める新生学園に入学することになる。
サトルはチェロの奏者だったが、自分より上手い学生はいないと思っていた。
ところが、フルートの美少年の伊藤や、ヴァイオリンの南枝里子と出会い、認識を改める。
夏休みのオーケストラの合宿で、南のことを好きだとサトルは気付く。
もどかしい初恋は上手くいきそうで、応援したくなる。
また、音楽の他に哲学にのめり込んでいるサトルは倫理の金窪先生とも親しくなる。
枝里子と相思相愛になるまでは時間がかかったが、恋愛も順調に進む。
学生生活をエンジョイし、ドイツに短期留学したサトルは枝里子の様子がおかしいことに気づく。


この作品は文庫本で3巻完結で、長編であるが、一気に読ませるパワーがある。
サトルや伊藤、周りの学生たちが真剣に音楽に取り組む姿は好い。
また金窪先生との哲学的なやり取りも面白い。
最初からサトルの挫折の物語だとわかっているのだが、どこでそうなるのかという期待もあった。
作者の経歴を見ると、自伝要素も強いように思えた。舞台も昭和だ。
ただ、サトルの実家が金持なので、スリルは感じなかったのは残念。


(P[ふ]2-2)船に乗れ!  I (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[ふ]2-2)船に乗れ! I (ポプラ文庫ピュアフル)