僕を殺した女

作者:北川歩美|新潮文庫
主人公の篠井有一は、目覚めると女性になっていた。
また、自分の記憶している1989年から、1995年へと時は移っていた。
89年に自分が暮らしていた部屋には、新たな入居者の大学院生の宗像が暮らしていた。
有一はヒロヤマトモコというキャッシュカードを持っていた。
有一の意識を持った、ヒロヤマトモコは誰もが目を引く美貌だが、何となく人工的な感じはする。
有一の心が宿ったトモコと宗像はわけがわからないまま、同居を始める。
有一は自分の身体がどうなったのか、実家を探るが、95年にも有一は存在していた。
かつての映画の「転校生」のように、有一とトモコは心が入れ替わったのではないか?
だが、95年に生きている有一は、トモコの姿をした有一には会おうとしない。
その後、トモコの肉体を持った有一は様々なトラブルに巻き込まれていく。


これは真剣に向き合わないとストーリーを見誤る。
明らかにSFのテイストなのだが、謎がほぐれていく過程ははミステリだ。
徐々に謎が明らかになって過程には、引き込まれてたし、魅力的な展開だった。
でも、最初の突拍子もない設定は、最後まで響いた。
1.女性化(性の変化)、2.記憶喪失、3.自分である他者の存在
これらの設定を解き明かすのは無理だし、プロットを欲張りすぎた印象。
面白いけど、残念な作品。恩田陸の小説の読後感に似ている。

僕を殺した女 (新潮文庫)

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