憑流(hyoryu)

作者:明野照葉|文春文庫
麻布十番の名家に住む朝比奈真希は、兄の婚約者の苑香を見て不吉な雰囲気を感じる。
祖母も同様に思っていたようだが、苑香の美貌と振る舞いは誰もが認めるところだった。
結婚式の直前に祖母が倒れ、「蛇が」という言葉を残して、死亡する。
苑香が朝比奈家に嫁いでから、兄の幸宏も父の宏康も仕事が順調に進む。
だが、長年の使用人が急に辞職し、母の咲枝が血液の病気で倒れる。
真希は苑香の素性を探ると、宮崎の憑き物筋の生れであったことが判明する。
母は亡くなり、苑香に対して批判的な人はいつの間にかいなくなってしまう。


この作家はいつも面白い作品を書いている。これも非常に面白かった。
憑き物筋を現代に蘇らせ、サスペンスかつホラーに仕上げている。
民俗学からのアプローチも興味を引く。
注連縄が蛇の交合の象徴だとか、緒方や美輪という姓が蛇の末裔という話は興味深い。
憑き物筋の苑香の関係者が巧妙に朝比奈家に入り込んでくるところは不気味だった。

憑流(hyoryu) (文春文庫)

憑流(hyoryu) (文春文庫)