ブラバン

作者:津村泰水|新潮文庫

1980年、吹奏楽部に入った僕は、管楽器の群れの中でコントラバスを弾きはじめた。
ともに曲を作り上げる喜びを味わった。忘れられない男女がそこにいた。
高校を卒業し、それぞれの道を歩んでゆくうち、いつしか四半世紀が経過していた。
ある日、再結成の話が持ち上がる。かつての仲間たちから、何人が集まってくれるだろうか。
ほろ苦く温かく奏でられる、永遠の青春組曲

高校時代の輝いている想い出と、現在の味気ない境遇がシンクロする。
もう一度、音を合わせようという単純な呼びかけにもなかなか仲間は集まらない。
精神を病んでしまった同級生、事故で腕を失った先輩。
そもそも、語り手である主人公が、赤字続きの飲み屋で四苦八苦している。
それでも徐々に仲間が集まり始め、練習を再開する。


ノスタルジーと現実のギャップがスパイスになっている作品で、リアルだった。
高校時代のエピソードと現在を生きる彼らの苦労を交互に描いたところはよかった。
でも、登場人物が多すぎたのは明らかに失敗だ。
主人公の他片と辻、桜井、用賀、皆元、沖田、新見、幾田、唐木、普天間まで絞ればよかったのに。
悪くない小説だが、もういいや。


ブラバン (新潮文庫)

ブラバン (新潮文庫)