どれくらいの愛情

作者:白石一文|文春文庫
4つの中編が収められた作品で、いずれも恋愛がテーマとなっている。
「20年後の私へ」は30代半ばで離婚した女性が、かつての夫に出会い、心乱れているところに、後輩の男性が近づいてくる話。
「たとえ真実を知っても彼は」は恩人ともいえる作家が亡くなり、葬儀におわれているうちに、自分の妻が作家の愛人であったことに気づく編集者の話。
ダーウィンの法則」は保育士を辞め、OLをしながら、スナックでアルバイトをしている女性が、客の男性と不倫に陥る話。
「どれくらいの愛情」はタイ焼きのチェーン店で成功した男性が、5年前にひどい振られ方をした女性のことを忘れられない話。
「たとえ真実を知っても彼は」以外は福岡の博多が舞台で、セリフの方言と、情緒的な街並みの描き方が印象的だった。
いずれの作品も面白かったが、やはり表題作の「どれくらいの愛情」が面白かった。
ベタな恋愛小説なのだが、予言をする先生の存在が際立っていた。

どれくらいの愛情 (文春文庫)

どれくらいの愛情 (文春文庫)